総合人材サービスを提供するパソナグループの一員として、ITとものづくりに特化したアウトソーシングサービスを提供するパソナテック(現・パソナ DXテクノロジー本部)。その開発拠点の1つが、島根県松江市にあります。総勢18人のエンジニアが在籍する「島根Lab」です。同社にUターン転職した青木大介さんは現在、プロジェクトマネージャーとして活躍しています。青木さんに現在の働き方や暮らしぶりをお聞きするとともに、同Labの開発責任者である角田徹さんと、採用担当の田窪大樹さんに事業や地域貢献への思いを語ってもらいました。
ープロフィール
青木大介さん
島根県雲南市出身。東京都内のIT企業に新卒入社。約7年間、システムエンジニアとして要件定義、設計を中心に担当。2020年5月、長女の誕生を機に同郷の妻とともに一家でUターン。現在、パソナテック(現・パソナ DXテクノロジー本部)で主に要件調整を行うプロジェクトマネージャーを務める。雲南市在住、妻と長男、長女の4人暮らし。
「島根で子育てしたい」。同郷の妻と一家でUターン
ーUターンを決めたのは20代でした。どんな理由からだったんですか?
青木さん 当時は横浜市に在住し、東京都内のIT企業に勤めていました。そんな中、第一子の長男が誕生します。妻も私と同じ島根の出身です。お互いの両親の手を借りながら、子育てできたらいいのにーー。そのときから、漠然とUターンを考えるようになりました。
決定的だったのは、2人目の長女が生まれたことです。やはり、島根で子育てしたいーー。その瞬間に、Uターンを決心しました。
ーUIターンは多くの場合、転職を伴います。そこに不安はなかったんですか?
青木さん ITの仕事は、きっとあるはずーー。当初からそう思っていたので、転職に不安を感じることはありませんでしたね。島根は「Rubyの聖地」といわれているように、IT産業が盛んなイメージがもともとあったんです。
Uターンを決めてからは、この「IT WORKS@島根」や移住相談窓口の「ふるさと島根定住財団」などのWebサイトを中心に情報を集めました。東京で開催される転職フェアや、「島根に移住したITエンジニアの本音を聞く会」などにも参加しましたね。
ー転職先を探すうえで、重視したポイントなどはあったんですか?
青木さん 東京での前職時代は、要件定義など上流工程の作業を主に任されていました。理想は、その延長線上で同じような仕事をすること。それを念頭に探していたときに、条件や希望にピッタリな会社と運よく出会うことができたんです。それが今のパソナテックです。
18人のエンジニアが挑む、全国レベルの開発プロジェクト
ーパソナテックでは、上流工程の仕事に携わることもできるんですね?
青木さん 一定の経験があれば、そういったポジションで働くこともできます。それは、島根Labが単なる一地域の開発拠点ではないからです。
島根Labの主力事業は、Web系システムの受託開発です。特徴的なのは、全国レベルの開発に携われる点にあります。パソナテックには東京本社を含め全国に営業拠点があり、東京や大阪で受注した開発業務を、島根Labを含めた各地の開発拠点と連携して手がけているんです。
角田さん 青木君の言う通り、島根Labには各拠点と連携して進めるプロジェクトがたくさんあるんです。そのため、全国のクライアント、幅広い業界の開発案件に関わることができ、先端技術にも触れられます。社員にとって、そこは大きな魅力になっているはずです。
どんな場所に住んでいようが、首都圏の仕事に携わり、技術レベルも高められる。コロナ禍で加速した価値観を体現しているような場所といえます。
青木さん 実際、私も東京や大阪のLabにいる開発チームとリモートでつなぎながら、何度も一緒に仕事してきました。最近では、メタバース関連のプロジェクトにも加わっています。今までの常識なら、なかなか島根のような地方では味わえなかったような開発案件です。
田窪さん 私からも、ぜひ補足させてください。島根Labが、2017年の開設当初から大事にしている考え方があります。それは、「これまで島根になかった仕事を、島根にもたらす」というものです。それによってIT産業や地域を盛り上げたい。これが、私たちが目指す地方創生の姿です。
設立からまもなく5年が経ちます。当初は私を含めて2人だったメンバーは、19人にまで増えました(2022年6月現在)。そのうち、私以外の18人がエンジニアです。さらに、半数以上がUIターン組で、中でもIターンが多いのが特徴です。
実は、私自身も東京からIターンした1人です。妻の実家が隣の鳥取県だったこともあり、島根Labの立ち上げメンバーを募る社内公募に手を挙げたんです。仕事内容だけでなく、UIターンしてきた人が働きやすい環境が整っている点も、当社の特色としてぜひお伝えしたいですね。
開発だけでなく、IT人材の育成も。エンジニアが学生の講師に
ーさらに興味深いのは、開発だけでなく、地域の人材育成事業も手がけている点です。これはどういう事業なんですか?
田窪さん 行政や教育機関と協力して行っている、産官学連携のIT人材の育成事業です。
具体的には、島根大学や松江高専などの学生を対象に、当社のエンジニアが講師となって特別授業や学外イベント、開発体験型のワークショップなどを行っています。最大の目的は、島根で働くエンジニアを増やすこと、そして島根のIT産業全体を盛り上げ、地域に貢献することです。
青木さん 私も以前、講師を務めたことがあるんです。初めての経験でしたが、とにかく新鮮でしたね。覚えた技術をアウトプットすることで、新たな気づきが生まれるなどプラスになっています。何より、知識やスキルを学生や地域に還元できるのは、地元に恩返しできているようでうれしいですよ。
角田さん さらに視線を外に向けると、松江市ではIT関連の勉強会が頻繁に開催され、エンジニアのコミュニティがとても盛り上がっています。都会を離れるとそういう機会がなくなると不安に思われる方もいるはずですが、松江に関しては違います。技術を磨き、仲間同士でモチベーションを高め合う。そんな環境が今、どんどん広がっているんです。
青木さん 私たちの講義をきっかけに、実際にエンジニア職に就いた人は少なくありません。きっと、これからどんどん優秀なエンジニアが島根から生まれてくるのではないでしょうか。私も負けないように、勉強を積んでスキルアップしていきたいですね。
「もう都会には戻れない」。丁寧に、ゆったり過ごす家族との時間
ー青木さんは、島根に住むのは約10年ぶりだったそうですね。暮らしぶりに変化はありましたか?
青木さん もう都会での生活には戻れなくなりましたよ。それほど居心地がよく、充実しています。
残業はほぼなくなり、平日でも子育てや趣味に費やせる時間が増えました。都会の喧騒下、満員電車に毎朝揺られる生活が一変し、通勤のストレスもなくなりました。
休日は家族みんなで公園に行ったり、買い物に出かけたりすることが多いですね。島根は海も山もある、自然豊かな地域です。家族でレジャーやアウトドアを楽しむのにもってこいの場所です。実家にも近いので、子育ての面でも何かあったら頼れる安心感があります。
エンジニアとして、父親として、島根で動き出した第2のキャリア、そして家族との時間。これから思う存分、満喫していきたいですね。