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松江の市街地から車で約10分。宍道湖畔の国道から山に向かって入ると、のどかな田園地帯が広がる。その中の小さな集落に建つ140年の古民家をサテライトオフィスとしているのが、東京都港区に本社を持つガリレオスコープだ。
力強い筆の文字で「風神坊」と書かれた看板が掛かる立派な長屋門。外から見ただけでは、ここがIT企業のオフィスだと想像できる人はいないだろう。門をくぐると手入れされた日本庭園があり、池では鯉が泳ぐ。
敷地の広さは約400坪。母屋のほかに離れや納屋、蔵、洗濯小屋、漬物小屋と6つもの棟があり、都会では考えられない環境の仕事場だ。
島根ラボ「風神坊」が設立されたのは2014年。 立ち上げメンバーでもあるマネージャー・webエンジニアの小嵜さんは、ここを住まいとし、念願だった田舎暮らしと趣味を満喫しながら仕事をしている。
「会社が島根県のUIターン事業に参加したのがきっかけで、サテライト展開を計画しているときに出会ったのがこの物件です。修繕が不要なほどきれいに管理されていて、古民家好きの社長が即決しました」
小嵜さんは名古屋の出身。福岡の大学を卒業して東京の本社に就職し、田舎とは無縁の都会暮らしを続けてきた。
「島根県への進出が決まり、社長に声をかけられたときは松江がどこにあるのかも知らなくて、あわててネットで調べました(笑)」と、当時を振り返る。
バックパッカーの経験があり、もともと放浪気質で「田舎に住みたい」と言っていた小嵜さん。白羽の矢が立ったのは願ったり叶ったりで、リモートワークにもまったく抵抗はなかったそうだ。
「実際に松江での暮らしを始めてみると、都会にはなかったコミュニティの存在に気付きました。地域の青年会にも参加し、夏や秋の祭りには企画運営に携わっています」
大学時代はルームシェアで過ごし、人との繋がりには興味があったという小嵜さん。そもそも人が少ないコミュニティなので人と人との結びつきは強く、それを取り入れることが住みやすさの秘訣だとも感じているそうだ。
「都会とはライフスタイルがまったく異なります。感じ方も人それぞれで異なると思いますが、自分にとっては暮らしやすい場所ですね。コンビニは自転車で行くにも遠く、利便さはありませんが卓球が近くでできたり自家菜園だってすぐできる。仕事はリモートで支障ありませんし、趣味と並行できるのでストレスは皆無です」
ガリレオスコープは2007年に設立で、今年が10周年となる。顧客の声を直接リアルタイムで収集、分析するWebシステム「QUICK SCOPE(クイックスコープ)」による顧客満足度調査や、従業員の声を集める「Tensions(テンションズ)」による従業員満足度調査のサービス提供が主な業務だ。
もちろんシステム開発は自社で行い、使いやすいインターフェースと新しい技術に対応したサービス改善も行っている。島根ラボ「風神坊」と東京本社、沖縄支社などはチャットワークを軸に、Googleハングアウトなどのビデオ会議ツールを活用し、業務や情報を共有する。
リモートワークのメリットのひとつとして通勤に関する負担の軽減が上げられるが「通勤時間は15秒」という小嵜さんのここでの働き方は、まさに究極のリモートワークだ。
「朝は1時間ほど庭の手入れや草むしりをして、10時からミーティング。昼食をとったら18時まで仕事をして、その後はゴルフの練習や卓球で体を動かしています。ニンニクの栽培やヨモギでお灸もつくっています」と、田舎のスローライフと仕事を楽しんでいる。
「風神坊」では地元の技術者や学生を招いてハッカソンの技術交流イベントを行うほか、地域交流会やUIターンの意見交換会も行っている。
「田舎暮らしには人によって好き嫌い、向き不向きがあります。リモートワークも同じで、誰にでも適しているとは思いませんが、働き方の一つとしてはこれからの持代に求められるスタイルではないでしょうか」と小嵜さん。
リモートワークは海外IT系企業を中心に導入が始まり、国内でも自動車、航空、食品など大手企業も導入に積極的だ。田舎暮らしとリモートワークはイコールではないが、自分の好きな仕事をしながら、趣味も生かせる場所で働くことは、誰もが描く理想だ。
もちろん、リモートワークには自主性や責任など、求められる適性もある。しかし、自然が好き、のんびりした環境で子育てがしたいという都会のエンジニアにとって、島根ラボ「風神坊」は最高のパフォーマンスを発揮できる職場ではないだろうか。
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